自己のために相続の開始があったことを知った時に該当しないとされた事案
債権者から債務者に対する内容証明郵便が 「自己のために相続の開始があったことを知った時」 (民法915条1項本文)に該当しないとされた事案
東京高等裁判所(上告審) 平成15年5月12日判決
事案の概要
S60. 5. 7 A→Y´ 貸付
H 4 A→Y´ 上記貸付残金3万8428円につき簡易裁判所で認容判決取得
? Y´死亡 (Y´、Y 長年音信不通)
H14. 1.29 A→Y(上告人)上記残金等Xに譲渡した旨通知…通知
(1) H14 5. 9 X(被上告人)→Y 上記債権の支払請求…通知
(2) H14. 9.27 Yの相続放棄の申述受理
Xは、上記(1)(2)の通知到達の時点がYが「自己のために相続の開始があったことを知った時」(民法915条1項本文)に該当し、東京家庭裁判所が平成14年9月27日に受理したYの相続放棄の申述は無効であると主張。 Yに対し、上記貸付金等を請求。
本判決の判断
これらの内容証明郵便は、それまで全く交渉のなかったA又はXから突然にYに対して送られてきたものである上、その内容も、
(1) 平成14年1月29日受付の内容証明郵便にあっては、昭和60年5月7日にAがY´に対して貸し付けた金員についての貸金債権をAがXに譲り渡したのでその事実を通知するとともに、貸金残金3万8428円及びこれに対する昭和60年8月31日から完済まで年40%の割合による金員をX宛に支払うよう依頼するものであり、
(2) 同年5月9日受付の内容証明郵便にあっては、XがYに対しAから譲り受けた前記債権について前記金員の支払を求めるという催告を内容とするものであって、 これらにはAのY´に対する確定判決(新宿簡易裁判所平成4年(ハ)第2156号)についての記載が一切なく、他に前記貸金債権の存在を証明する資料が何も添付されていなかったのであるから、相続人であるYが貸金債務の成立を疑い、あるいは、仮にそれが成立していたとしても、消滅時効が完成することによって貸金債務が消滅すべきものであると考えたとしても不合理であるとはいえないのであって、原判決が、上記各内容証明郵便の記載内容では、被相続人に相続財産の存在を認識させるには足りず、その内容を了知した時をもってYが相続財産の存在を認識しうべき時といえないとした判断は正当として是認することができる。
cf. 最判S59.4.27「相続人が、右各事実を知った場合であっても、右各事実を知った時から3か月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて当該相続人に対し相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において右のように信ずるについて相当な理由があると認められるときには、相続人が前記の各事実を知った時から熟慮期間を起算すべきであるとすることは相当でないものというべきであり、熟慮期間は相続人が相続財産の全部又は一部の存在を認識した時又は通常これを認識しうべき時から起算すべきものと解するのが相当である。」
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